ツアーと聞くと、団体客がバスや鉄道などでガイドと一緒に移動して、観光地を周遊するものを浮かべます。しかし、ここで示す個人ツアーとは、旅行会社があらかじめ鉄道や飛行機の移動ルート、宿泊先のホテルを組んだパッケージ商品のことを示します。基本的には交通手段と宿泊先のホテルのみがあらかじめ決められており、ツアーによってはレンタカーや観光フリーパスを付けることもできます。
この個人ツアーは往復の移動と宿泊先のホテルがセットになっているため、事前に交通費と宿泊費を支います。そうなると、普通の運賃で移動する場合と、ツアーパックで移動する場合で、どの程度交通費が変わるのか?また、ホテルの宿泊費は、個別に予約した場合と比べて、どの程度違うのが気になると思います。ここでは、その個人ツアーについて、メリット・デメリットを紹介しつつ、旅費全体の節約の観点からも考えていきます。
ツアーのメリット・デメリット
まずツアーのメリットを解説します。以下のメリットが上げられます。
メリット
- 1人から利用可能。個人旅行や複数人の旅行でも利用可能
- 移動手段、宿泊先、ツアーによってはレンタカーなどがあらかじめセットになっているが、それ以外は制約なし。自由行動が可能
基本的には、最低限旅行に必要なものがツアーパッケージに組み込まれていますが、それだけです。団体ツアーでガイドや添乗員に従い、決められたルートを移動するツアーと異なり、自分でスケジュールを組められ、自分の行きたい場所に行けます。なお、宿泊先については、利用できる宿泊施設の範囲内で自分で選択することが可能で、自分が宿泊したいホテルに宿泊できます。
- 移動手段、宿泊施設、レンタカーなどが一度に決められるため、個別に検索し予約する手間が省ける
上記を個別に検索すると、自分でカスタマイズできる反面、時間がかかります。しかし、ツアーであれば、一度に決めて、あとは旅行会社がすべて手配してくれるため、その時間が短縮でき手間が省けます。
- パッケージ価格は通常の運賃・価格よりも安くなる。旅費が節約できる
これは別の項目で細かく解説しますが、別々に予約するよりも安くなる場合があります。
- トラブル時に旅行会社によるサポートがある
個人旅行の場合、すべて自分で手配しなければならず、そこで起きたトラブルもすべて自分で対処する必要があります。一方で、ツアーであれば、旅行会社による介入とサポートがあり、個人旅行に比べて何か起きた時のリスク管理、安心感があります。
デメリット
- 完全自由なわけではない。スケジュールや制限に縛られる
メリットの項目で自由な旅行が可能と言いましたが、完全に自由ではありません。例えば利用する交通手段はあらかじめ決められており、かつ何時何分の列車に乗車するのも決められています。新幹線の早割切符と同じで、時間指定が設けられており、指定された列車に乗り遅れた場合、基本的には次の列車に乗車する際、乗車券・特急券を別に購入しなければなりません。一部のツアーでは、後続の列車の自由席に乗車できるものもありますが、多くありません。また基本的に、特急・新幹線・飛行機(LCC以外)の移動が中心であり、高速バスや在来線は利用できません。
また、ホテルや観光地もある程度自由に選択できるのですが、ツアーパッケージで選択できる範囲に限られるため、その範囲内にない自分の宿泊したいホテルや、観光したい場所に行けない点も上げられます。
このほか、旅行で複数の場所を訪れて、日ごとに別々の交通手段、宿泊施設を利用するような旅行には対応していません。例えば、東京から新幹線で京都に行き、京都市内を数日観光し、新幹線で帰宅するのであれば、ツアーパッケージが利用できます。しかし、東京から京都に新幹線で行き、次の日は大阪、次のは神戸、帰りは飛行機で帰るような場合、そもそもそのようなツアーパッケージが販売されていないため、利用できません。
- 個別に予約するよりもかえって割高になるケースもある
ツアーパッケージは安くなる場合もありますが、ケースによっては割高になる場合もあります。これは次の項目で解説します。
このように見ていくと、ツアー商品も一長一短です。あらかじめ決められたスケジュールで回る旅行、出張で特定の都市に滞在するのであれば向いています。しかし、自由旅行であれば、スケジュールを立てても、フレキシブルに旅行日程や移動手段、観光する場所を変更できますが、ツアーを利用するとそれができません。自由気ままに各地を旅行したいという人には不向きと言えます。
旅費節約の観点から。ツアーは安いのか?高いのか?
ここでは具体例をあげて見ていきます。
- 例1;東京仙台ツアー旅行
(ツアー) | 東京駅→東北新幹線→仙台駅→2泊宿泊(仙台観光)→東北新幹線→仙台駅 *交通費・宿泊費込み、選択する列車によっては追加料金発生。+1,200円~2,400円 参考にしたツアー | 26,600円~ (1人) |
(個別で予約) | 東京⇔東北新幹線⇔仙台駅(往復自由席運賃 21,620円) 宿泊するホテル2泊 (10,260円) ホテル参考(ツアーの宿泊先と同じ) | 31,880円 |
上記は1人の個人旅行で、東京仙台間を新幹線で移動、特定のホテルに2泊宿泊するものとします。この場合、ツアーは最安値で26,600円、選択する列車(どの時間帯の列車を利用するか)によっては追加料金が片道1,200円発生するため、最大で29,000円です。一方、個別に予約、購入した場合は31,880円となり、ツアーの方が2,880円~5,280円安くなる計算です。
- 例2:東京京都ツアー旅行
(ツアー) | 東京駅→東海道新幹線→京都駅→1泊宿泊(京都観光)→東海道新幹線→東京駅 *交通費・宿泊費込み、選択する列車によっては追加料金発生。 +2,000円~4,000円 参考にしたツアー | 67,200円~ (2人) |
(個別で予約) | 東京⇔東海道新幹線⇔京都駅(往復自由席運賃 53,280円) 宿泊するホテル2泊 (14,100円)ホテル参考(ツアーの宿泊先と同じ) | 67,380円 |
上記の旅行人数は2人、東京京都間を新幹線、特定のホテルに1泊宿泊するものとします。この場合、ツアーは最安値で67,200円、選択する列車によっては追加料金が1人当たり片道1,000円発生するため、最大で71,200円です。一方、個別に予約・購入した場合は67,880円となり、ツアーの方が180円安くなるものの、鉄道の選択(どの時間帯の列車を利用するか)で追加料金が発生する場合は、3,680円高くなります。
どもツアーでも、乗車する列車は自分で選択する形で、第1希望、第2希望の列車を選択します。第1希望が利用できない場合は、第2希望の列車に割り振られます。この列車の選択によっては、追加料金(+千円程度)が発生します。これは、特に多くの人が利用する時間帯、行きであれば朝の時間帯、帰りであれば夕方の時間に発生することが多く、実際にツアーサイトで表示されている以上に料金がかかる点には注意が必要です。
- 例3:東京鹿児島ツアー旅行
(ツアー) | 東京駅→東海道・山陽・九州新幹線→鹿児島中央駅 →2泊宿泊(鹿児島観光)→東海道・山陽・九州新幹線→東京駅 *交通費・宿泊費込み、選択する列車によっては追加料金発生。 +10,800円(片道5,400円) 参考にしたツアー | 57,600円~ (1人) |
(個別で予約) | 東京⇔東海道・山陽・九州新幹線⇔鹿児島中央駅(往復自由席運賃 61,340円) 宿泊するホテル2泊 (8,892円)ホテル参考(ツアーの宿泊先と同じ) | 70,232円 |
上記は個人旅行で、東京鹿児島間を新幹線、特定のホテルに2泊宿泊するものとします。この場合、ツアーは最安値で57,600円、選択する列車によっては追加料金が片道5,400円発生するため、最大で68,400円です。一方、個別に予約、購入した場合は70,232円となり、ツアーの方が12,632円も安くなります。ただし、鉄道の選択(どの時間帯の列車を利用するか)で追加料金が発生する場合は、68,400円ですが、それでも差額は1,832円で安いのは変わりありません。
とりわけ、このケースのように新幹線の移動が長距離で、他のJR会社(JR東海・JR西日本・JR九州)をまたぐ場合、新幹線では早割などの格安切符がありません。そのため、ツアーが新幹線の運賃を安くする唯一の方法であることがあります。なお、このケースの場合、JRで往復割引が利用できましたが、これは2026年3月に廃止されます。
個別で検索・予約した方が安くなる場合
上記例の2のケースは、追加料金の発生でツアーの方が割高になりますが、上記以外でも、旅行プランの立て方によっては個人で手配した方が安くなることがあります。
- 例1;東京仙台ツアー旅行(交通手段を高速バスに変更)
(ツアー) | 東京駅→東北新幹線→仙台駅→2泊宿泊(仙台観光)→東北新幹線→仙台駅 *交通費・宿泊費込み、選択する列車によっては追加料金発生。+1,200円~2,400円 参考にしたツアー | 26,600円~ (1人) |
(個別で予約) | 東京⇔高速バス⇔仙台 片道3,000円 往復6,000円 宿泊するホテル2泊 (10,260円) ホテル参考(ツアーの宿泊先と同じ) | 16,250円 |
上記の場合、移動手段を高速バスに変えることで、新幹線にかかる運賃を大幅に節約できます。高速バスであれば、往復10,000円もかからないので、合計で16,250円と、ツアーよりも10,350円安くなります。ちなみに、この移動を夜行バスにすれば、宿泊費も節約できるため、さらに安くできますし、同じ新幹線にしても、JR東日本の早割切符を購入することで、ツアーを使わなくても安くできます。
もっとも、バスの場合、移動時間が長くなる分、仙台の滞在時間が減るデメリットはあります。また単純に、バスの移動は疲れるという意見もあります。ただし、バスでの移動に問題がなければ、わざわざ高いツアーを選択する必要はありません。
ツアーの交通手段はもっとも快適で移動時間の短い手段が選択される傾向にあるため、最安値の交通手段は考慮されません。これは飛行機も同様です。単純に運賃の安さだけで見れば、格安航空のLCCが有利で、かつ飛行機であれば移動時間も長くなることは少ないので、そこで新幹線のツアーを選択するメリットは少なくなります。
ホテルについても同様で、自分で検索するとツアーでは掲載されない格安ホテルを見つけることもできます。無論、ホテルのサービスの質などは考慮する必要がありますが、その限りではありませんし、単に安く宿泊できれば良いのであれば問題ありません。要するに、自分で旅行を手配して、安くアレンジできるのであればその方が良く、ツアーを選択するメリットは少ないということです。
まとめ
以上をまとめると、ツアーはメリット・デメリット双方あるものの、鉄道の移動において、個人ツアーは、個別で予約するよりも旅費を節約できます。ただし、それはツアーによって様々であり、かえって割高になるケースもあります。一方で、ツアーが最安値ではないため、自分で格安の旅行をアレンジできるのであれば、その方が安くなることが多いです。また、自由度の観点から言うと、個人ツアーは制約が多いので、自由に旅行しフレキシブルに対応したいのであれば、ツアーはかえってデメリットになることの方が多いです。